2007/02/22

モンキーポッドと雑草と雑草以外の何か

昔のサイトを久しぶりに見てみたら、我ながら結構面白いことが書いてあったのでもう一回書いてみる。

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 もらいもののモンキーポッドという植物を職場で育てている。先週水をやり忘れ、下のほうの葉っぱが枯れ始めた。植物を育てるなんて小学校一年生の朝顔と二 年生のひまわり以来だ。記憶を辿っていくと、ある程度育つと、下のほうの葉っぱは枯れていたような気もする。なんだ。正常じゃないか。

 気分転換に外にでて煙草を吸いながら考える。鑑賞用の植物は育てるのが難しい(正しくは、俺にとってあらゆる植物を育てるのは難しい)ので、どうせなら雑草を育てたい。ここである不思議な点に気づいた。雑草はどのように増えているのだろうか?

 植物は種や球根から育つ。雑草には球根はないだろうから種だろう。種は花が咲いてからできるものだと思うが、雑草で花が咲いてたり、種ができてたりする のを見たおぼえがあまりない。存在すると断言できるのはタンポポだけである。もしかしたら人の手によって刈られず、実を結んだごく少数の雑草が凄い勢いで 種を蒔いているのかもしれない。いや、それはない。雑草は多分色々形状が違うと思うし、そんな種類が少なかったら除草剤で一掃されるはずだ。雑草はその強 さだけでなく、多様性のおかげもあって生き残れているはずだ。

 煙草が吸い終わる頃にある一つの結論にたどり着いた。「除草剤屋が路頭に迷わないように街中に種を蒔いている」。これで俺の中で辻褄があった。

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 それから数日後、皆で夕飯を食いに行った。美味い中華を楽しみ、適当に雑談していた。食後の会話がふと途切れ、「おい、なんか話そうよ」と誰かが言った。いい加減疲れてたし、仕事の話もしたくなかったので雑草の種の話を持ち出してみた。
 「で、答えは知ってるの?」
 不思議そうな顔で俺のほうを見ながら上司が言った。
 「いや、知らない」
 「kudzuって面白いこと言うね」
 あまり綺麗な結論は出なさそうだし、くだらない議論にはもってこいなトピックだ。みんな比較的理系であり、プログラマという論理を組み立てる仕事をしているわけだから、この答えが出なさそうな不思議な問題に対してどう論理を組み立てるかも興味があった。
 「クローバーって花咲くよな」
 確かに。タンポポだけじゃなかったな。気づかなかった。けどこれでも二種類だ。
 話の流れは大体自分一人で考えてたときと同じだったので、自分の結論である、「除草剤屋が路頭に迷わないように街中に種を蒔いている」説を発表してみた。
 「あー、確かに。面白い」
 念のため書いておくが、これが現実であるわけがないことは自分も皆もわかっている。けど、自分の手持ちの情報から組み立てた論理の中では一番矛盾が少ない。
 「違う!わかった!」
 ビールを飲んでいた先輩がにっこり笑いながら言った。
 「花は雑草じゃないからだ!」
 なるほど。雑草は育てば花がさく。しかし花が咲けば、それはすでに雑草ではなくなる。よって花から雑草は生まれるが、雑草から雑草は生まれない。雑草の定義から俺は間違えていたのか。わかりやすいロジックだ。すっきりしたところで酒に口をつける。今日はよく眠れそうだ。

 「けどタンポポは雑草じゃない?」
 そんな上司の言葉を無視して俺は酒を飲み干した。

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